糖鎖

糖鎖(Glycan)とは、単糖がグリコシド結合で繋がった糖の鎖のことを言います。

DNAの構成

単糖は天然のものでグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)、ガラクトースなどが知られています。
これらはほとんどの生物で栄養素として働いています。

DNAの構成

単糖が2つ繋がったものを二糖類と呼び、マルトース(麦芽糖、グルコースとグルコース)、スクロース(ショ糖、フルクトースとグルコース)やラクトース(乳糖、グルコースとガラクトース)等があります。

DNAの構成

さらに糖が結合したものを多糖類と呼び、デンプンやグリコーゲン、セルロースなどが知られています。
ここまでは糖だけで構成された糖類について述べましたが、生体内の糖鎖は多くがタンパク質や脂質と結合した状態で存在しています。
糖タンパク質は、タンパク質のAsn(アスパラギン)残基に結合するN-結合型とSer(セリン)またはThr(スレオニン)残基に結合するO-結合型糖鎖があります。N-結合型糖鎖は、DNAからRNAへ転写、RNAからタンパク質へと翻訳された後、小胞体でグリコシル化され、ゴルジ体で成熟します。一方O-結合型糖鎖はタンパク質へ翻訳された後、ゴルジ体でグリコシル化を受けます。

DNAの構成

この様にしてタンパク質に糖鎖が付加されることにより、様々な機能を持つことが分かっています。糖タンパク質は細胞表層に多く存在しているため、その細胞と細胞外の物質との関わりにも大きな役割を果たしています。
糖鎖の役割の一つとして、細胞の種類を糖鎖によって識別することができます。
最も有名なのが血液型です。血液型にも糖鎖が関連していることが分かっていて、ABO式血液型は赤血球に結合する糖鎖の違いによって区別されています。
O型の糖鎖を基本とすると、A型はO型にN-アセチルガラクトサミンという糖がさらに結合していて、B型はO型にガラクトースが結合しています。さらにAB型はA型とB型の糖鎖の両方を持っています。

DNAの構成

また細胞ががん化すると糖鎖構造に違いが生じることから、がん細胞を区別することができると考えられています。
細胞表層の糖鎖の役割は他にも、傷ついたり古くなった細胞の糖鎖を認識することで新陳代謝の目印とすることや、細菌やウイルスも細胞表面の糖鎖を足がかりにして体内に侵入することが分かっています。その他には分解や熱からタンパク質や細胞を守ったり、タンパク質でできた医薬品の中には糖鎖修飾がないと効果が出ないことも分かっています。これらの例を見るだけでも糖鎖の役割が非常に多岐に渡ることが分かります。
糖鎖研究は糖鎖自体の構造の複雑さ、構造の多様性から分析が難しくDNAやタンパク質の様に解析が進んでいません。そのため、糖鎖の役割や機能を利用した疾患検査や医薬品の開発が今後盛んに展開していくことが期待されます。